その後はお決まりのコース、『マーズバー』へ行こう。
CBGBの楽屋みたいな呑みや。テキサスウルフのマイクはお酒は飲まないんだが、ソフトドリンクすらたのまない。
『何か呑まないの?』
『こんなキタネエ店のものなんかのめるか!』。
HIPHOPブラザーな少年たちが言う。『アフラって知ってるか?』もちろんだよ。
UGがジャパニーズHIPHOPを身振り手振りで教えてる。
NYの若い世代はいまのメインストームもアンダーグラウンドも退屈にみえるのかな。おまえらやたら詳しいな。
突然そのなかのリーダー格のヤツが信号待ちのトラックに向かって走り出した。
荷台のデッキに駆け上がってなんか描き出したよ。
ラクガキ?アート?こういうことなんだろうな。
走り出したトラックから飛び降りて、誇らしげにこっちに戻ってきやがる。
ババアのパンクスは自分のノートPCで勝手に好きな曲かけてるし、ホームレスは黙ってトイレに入ってくし。
インテリとナードとハードコアとジャンクがたむろするいかにもNYな、そしてゴミだめみたいな人間交差点。どっかでも見たな、そんな風景。
ステキな店。何杯ものジャックコーク。いい夜だ。
あしたからのライブ、そしてその先のいろんな街と人々。
楽しみを想像しながら眠りについた。
夢は見なかった。
夢は見なかった。
マンハッタン午後3時、ゆったりした時間を引き裂くように、トオルの持って来たi-PODサウンドシステムから村八分が部屋中に響き出す。
いろいろあったが5年ぶりのアメリカツアーだもん。メンパーの気合いが伝わってくる。
『俺たちはアメリカ中に毒をまき散らしに来たんだぜ!』
セイジの声が部屋を駆け巡る。